「ミナ、それいつ聞いたの?」
「夏休みの部活の時、兄さんがアイス差し入れに来てくれたでしょ?ほら、希歩と一緒に」
……え?あの時?
「部室の前でさ、湯野くんと兄さんが話してるのをたまたま聞いてさ」
「それ、他の部員も知ってるの?」
呆然として、声に魂が入らない。
「わかんない。ふたりだけで話してたから、他の人は知らないんじゃないかな。だって、知られてもいい事なら、兄さんはみんなの前で言うもん、絶対」
そう、だよね……。
どの大学に行くか、別に隠すことじゃない。
受験生なんだから、いずれ話題になることだ。
いずれ話題になることなのに、あたしは勝手にK大だと決めつけていたからたいして『受験』と言う言葉の大きさを考えていなかった。
陵雅さんが合格すれば、完全に遠距離になる。
学生のあたしには、簡単に会いに行けない距離だ。
もし本当にS大を受験するんだとしたら、陵雅さんと一緒にいられるのは、あと5カ月くらいって事……?
そんな……。
「あ!! 希歩!!」