顔を上げると、 サラサラな髪を揺らして 大きな黒い目で 心配そうに私の顔をのぞきこむ男の子。 「けい、ちゃん……」 同じマンションのけいちゃんだ。 幼稚園でも同じばら組で、 泣き虫の私をいつも いじめっ子から守ってくれる、 天使みたいに優しい男の子。 けいちゃんは、 私を力づけるようにニッコリ微笑んで、 「はい」 と、なにかをさし出した。