いきなり、後ろから春菜に腕を引っぱられ、 急ブレーキがかかって、つんのめりそうになった。 「わっ、春菜、危ないって!」 だけど、私以上に春菜の方があせってる。 「ちょ、ちょっと、薫! 今の車、見た?」 春菜の目は、大きく見開かれてる。 「え? 赤い車のこと? 見たよ、かっこいい車だったね」 「ちがうちがう! 車の中! すっごい美人と計君が乗ってた!」 「えっ、まさか……」 振り返ったけど、赤い車はもう見えない。