ボソッとつぶやいて、自分の部屋に入ろうとすると、 キッチンから出てきた母親に呼び止められた。 「おかえりー。 ねぇ、計、井出(いで)さんからまた電話あったわよー」 「あぁ……」 ちぇ、しつこい女……。 適当にごまかそうとしたけど、母親は逃がしてくれない。 「あぁ、じゃなくて! あんた、ちゃんと返事してないの?」 「したよ!」 しぶしぶ、カバンだけ部屋に置いてリビングへ向かう。