「行ってきます」

ぶっきらぼうの低い声が、誰もいない家に響く。

今日から高校2年生になる宮野直樹は、今遅刻していた。

と言っても、いつものことだからか彼は気にしない。

むしろ、時間に余裕のある時刻に家を出る方が100パーセントありえない。

しかし、今日は始業式があるからだろうか。

普段よりも、数分玄関にいる時間が早い。

寝癖に、開いてなさそうな目。

そして、やけに軽そうなリュックを背負い、彼は家を出た。


ーーいや、出ようとした。


「うげっ」

直樹は扉に突進していた。

「あれっ?」

扉が開かない。

あぁ、そうか。
鍵がかかっているのか。

寝ぼけた頭を少し回転させ、結論をだした彼は鍵を開けた。

「えっ?」