僕には、その一連の出来事がスローモーションの様に見えた。


動け!


頭の中で声がする。


右足を出す。


腕を伸ばす。



もう助けられないのは嫌なんだ。



好きなひとを。






まず、雫の左手を掴む。


そして、強く引っ張りながら左手で腰を抱き寄せる。


柵の上に乗せた身体を思いきり引き上げる。


自分の中にそんな力がどこにあったのか分からない。


ただ、雫の身体越しに見た地面は遥かに遠く、


彼女を行かせてはいけない。


そう強く思った。