雫の来ない日が続いていた。


あの日、駅で別れてからだから、もう六日になる。


いつもの様に、診察を終え病院を出ると、坂の下で雫が待っていた。


笑いながら手を振っている。


しかし、彼女の様子がおかしいのに、すぐ気付いた。





腫れたまぶたに、かさかさのくちびる。


真青の顔。


黒いレースのワンピースの袖からは、


掌へと血が滴っていた。


袖を捲り上げハンカチで、血を拭い取ってやる。



「雫が、黒い服を着るなんて珍しいね」


彼女はいつも、白やピンクのフワフワしている服を着ているから、


なんだか今日は別人の様に見える。




「ママが死んだの。」


雫が、小さな声で呟いた。



「だから、喪服のつもりなんだぁ。」






 とりあえず、雫を連れて家に帰る。


その間中、電車の中でも、歩いていても雫はにこにこしていた。


しかし、家に着きあや子叔母さんが傷の手当てをしていると、


雫は叔母さんにしがみ付いて泣いた。


大声で、ずっと泣き続けた。