諦めきった顔で祀莉になにかを渡した。

「……」

なにもできなかった。
悔しい思いが出る。でも止めることも引き止めることもなにも出来ずに呆然と立ち尽くすしかない。
車に乗せられてもう二度と振り返らなく前を見ていた。

渡されたものを見ると丸く……それは指に嵌める指輪のように見えた。
朝日の光に照らすと内側に文字が掘られていた。
それを読み上げる。

「――K.JIN」

と。




「祀莉お嬢様」

声がして振り向くと一人の男性がいた。

「社長がお呼びです」

「兄が?」

指輪を隠し、そんなに遠くに行ってないからすぐに見つかると思っていた。
でも、連れ戻されるのは兄付きのボディーガードだと思っていたのでまさかこの人が来て驚いた。

「あなたが直々に私を呼ぶなんて珍しいですね」

「……。
時期が来て、祀莉さんがあの人に出会い、僕が来ました」

「時期?
出会い?」

「そんなことより、社長が……」

男性は祀莉から視線をそらしお店から離れ、再び公園内に入り正面に止まっている白の普通車に乗り込み、車は動き出した。