「その人を渡してもらえるかな」

「嫌がってるじゃない」

「嫌がってるって言われても……先輩どうします?」

困り顔でチャラい男は先輩に見て相談する。

「我々はだた連れてくるだけだ」

だんだんと近づき祀莉の後ろにいる女性の腕を無理やり掴み連れ出すつもりだ。

「やだ、痛い。
離して、離しなさい」

「あ」

祀莉は男の力にかなうはずはなく、でも力を込めて女性の腕を掴んでいる手を離そうと試みる。
どんなに足掻いても離れない。
学校に通っていた頃は運動部や文化部に入らず帰宅部だった祀莉は今更ながら力がないことを痛感した。

「先輩にかなうはずないよ。
この体で先輩はボクシングの世界チャンピオンだから」

「!?」

男性は反対の手で女性の腕を持ち替え、離した手を振り払い祀莉はよろけて転けそうになるがなんとか踏ん張ることができた。

「祀莉さん。
もう、いいの……。
これを」