暉は知ってたんだ。
自分の体が他の人と違うことを。
知って……不安になったのかな?
それとも、違うことを考えたりしたのかな?
今はもう聞くことができない。
いないから。
いてもそんなことは聞けないけど。

「はぁ〜」

体を横に向け目を閉じると眠気が襲ってきた。


兄は祀莉の髪を触るのか好きだった。
男なのに祀莉の髪を触ると落ち着くとか言って忙しいときでも学校に行く前は必ずと言っていいほど髪をセットしてくれる。
でも、ほとんどポニーテールで学校に通っていたから兄からしてみたらつまらないと思ったことだろう。
目立つことが嫌いな祀莉は華やかにして学校に通う勇気もなかった。

いつからだろう。
そうだ。兄さんが私の髪を触らなくなったのは両親から会社を奪った……引き継いたときからだ。

「髪の毛、セットして」

と、言っても忙しいからと理由をつけ髪を触ってくれなくなった。


「俺は必ず見つける」

悲しいはずの父の葬式の日。
喪主を勤めている兄の手があき、祀莉の髪を触っている手を止め言う。

「父は殺された」


「え?殺された?」

「そうだ」

突然なにを言ってるのかわからない。
どこにそんな証拠があるのか?