祀莉は自分の家の部屋に戻りベッドの上で深いため息を落とした。


温泉から出ると自分の服の代わりに花柄のワンピースが置いてあった。あまり着たことがなく選ばないだろうと思うのにこれしかないと思うと着るしかない。
サッパリとしたのにこの姿を思うと足取りが重く感じる。でも、この屋敷から出るには暉の案内が必要だ。どこをどう歩いたかわかっているが迅に会うかも知れないと思うと怖い。
なんとか妃乎の部屋まで帰って来ることができた。

「温泉どうだった?」

「え?暉さんは?」

薄いシーツを1枚体に纏って体のラインがわかる。
落ちないようにシーツを押さえ前を行く。

「暉には部屋に戻ってもらったの。どうしてもわたくしが祀莉さんと2人になりたくて」

妃乎はずれないようにシーツを押さえ祀莉に近づき指輪を目の前に見せる。

「これは、指輪?」

「ええ。
やっぱりあなたに預けるわ。
持っていてほしいの」

「……」

「あの人に奪われないで。
お願い」

妃乎が祀莉の背中を押す。
手を振り笑顔で見送る。


「いいのか?」

「……」

「指輪と呪い……か」

壁にもたれ掛かっている瞳が違うオッド・アイの少年は腕組みして空を仰ぐ。