わたくしはどうしてこの人に抱かれてるの?

裸で薄いシーツを体に纏っただけでなにもない壁に座りもぞもぞと動くベッドに目を留め掌に握っている物を眺める。

「……」

今なら逃げ出せるだろう。
掌にある、指輪を自分じゃない人に預けたかった。
でも、それは無理なことわかってた。どうして祀莉に渡したのかな?
この屋敷と指輪が関係してるから祀莉に預け謎を解いて欲しかったのかもしれない。

「妃乎、どこだ」

妃乎は男に聞こえないため息を出し返事をする。

「なに?」

「オレのこと愛してるか」

シーツ越しに迅が妃乎を求めているのがわかり、毛布の隙間から出ている髪を優しく触る。

「ええ。愛してるわ」

「そうか」

ゆるりと毛布から顔を出し妃乎を見る。
さっきまで祀莉のお腹を蹴っていた人とは思えない。
優しい顔で妃乎を見上げる。

「部屋に戻っていいかしら?」

「ああ」

「迅。
わたくしたちは本当に愛し合っていいの?」

「……」

「ごめんなさい。
余計なこと言ったわね」

「……」

薄いシーツを纏い妃乎は儚い笑みで迅を見るなりいそいそと歩を進める。