――大嫌い!!

そう言って私は兄の前から飛び出した。
どうして?なにが原因なのか忘れた。
でも、大好きだった兄に大嫌いと言ってしまった。

気にしない。
悪いのは兄なんだから。冷静になれば少しずつ思い出すだろう。

確か、両親のことでケンカしていたような気がする。

父は四年前に亡くなり、それと同時に父が築き上げた会社を引き継ぐことになった。
母は父が亡くなる前に亡くなった。
もともと、身体が弱く兄を生んで育てるだけで大変だったらしい。
数年後に妹の私を生み半年後に亡くなった。
私は母の顔を覚えていない。

父はと、言うと母を忘れるためなのか仕事に没頭し、兄と私で遊んでくれた記憶がない。
父といると楽しいと思ったことはなく、兄と一緒にいた方が楽しいと思ったがしたいにそれさえも思わなくなり、友人と一緒にいた方が楽しいとさえ思うことが多くなった。

「どうして父さんから会社を奪うように自分のものにしたの?
学校を途中で辞めてまで」

「祀莉(まつり)。
奪うとは言い方が悪い。引き継いたと言ってほしい。俺は羽狸(わたぬき)家で……父の死因が知りたい」

「死因?」

兄はそれきりなにも語らなくなり部屋を出た。