出迎えたのは白髪をきれいに結っている、いかにも厳しいだろうと思わせる年配の女性が睨みを利かせながら祀莉を上から下、また上から下、何回もいやそうに見た。

「この指輪の持ち主いますか?」

じろじろと見られ居心地悪く感じた。

「……中へ」

女性が促し、そのあとについて行く。

木で隠れていたのかそれほど高くはないが和風建築物が見え、その中に女性は入り正面の部屋に通された。
部屋の中のものは何もなくあるのは必要最低限の机、壁には四角い時計がかけてあるのみ。
この部屋を見る限り生活感ない。

「指輪を」

向かい合うように祀莉と女性は座った。

「本人に」

「私から返しておきます」

鋭く睨まれ手に嵌めている指輪を胸に抱きしめる。

「ばあや」

祀莉の後ろにある襖(ふすま)から聞き覚えのある声がした。振り向くと朝、公園で出会った女性が祀莉を見て微笑んでいた。
違うところは黒の上下のスーツだったのが着物になっていた。白を基準に袖と裾には大きく金色の蝶が縫われていた。
髪はサラサラと揺れ天使の輪が見える。

「ひ、妃乎(ひめこ)……さま……」

どうやらこの女性の名前は妃乎と呼ばれているらしい。