祀莉が連れてこられたのは兄が経営している会社の社長室。
兄は仕事はしておらず、じぃーと祀莉を見ていた。

「兄さん……」

「お帰り。
頭冷えたか」

部屋の真ん中にあるソファに座る。

――ガチャ

入って来たのは、祀莉を連れ戻した人が祀莉の前にお茶を置く。

「兄妹、水入らずで話しがしたい」

「わかりました」


長く感じた。
正確にはもう何分なのに、兄とこうして向かい合って話をしするのが怖い。

「俺が悪かった」

「……」

「許してくれるか?」

お茶を飲み、兄を見上げる。
兄はいつの間にか隣にいて驚いた。
怖い目で見て謝っているようには見えない。

「それはなんだ?」

指に嵌めている指輪を鋭い目で見ていて、湯のみをテーブルに置き指輪を掌で隠す。

「誰から貰った?」

「誰って……」

「まぁ、いい。
その指輪、俺に見せてくれ」

首を左右に振りどうしてだろう。兄に指輪を見せてはいけないような、気がする。

「見せろ!!」

祀莉が指輪を見せないとわかると強引に腕を持ち上げ指輪を奪おうとする。

「やめて」

そんなことお構いなく兄は指輪を外した。
祀莉は急に腕を離されバランスを崩しテーブルに頭をぶつけるところだった。