（未定）

何分、車で走っただろう。
たぶん、すぐなんだろうけど妃乎にとっては長い間、走り続けている感じだ。
あの方が嫌いでもなければ好きなのかな？
好きだから逃げて来た？
あの方は好きなんだけど家が、家の規則（ルール）が好きになれない。
ひとつひとつ、なにかをするたびに誰かに見られて息苦しい。
二度と戻りたくなかった。
この人たちに見つかりおそらく外にはもう……。


車が止まり、妃乎とSPが降りると車がどこかに行った。
妃乎の左右にはSPが付いており逃げることはできない。

｢逃げないわ｣

そうは言っても信じられないのかSPは離れてくれない。

｢ないかな？｣

チャラい男が掌（てのひら）を差し出した。

｢な、なに？｣

｢指輪｣

｢……。
わたくしから返しておきます。
あなたがたはお仕事に戻ったらどうですか？｣

指輪を持ってないことを知られたくなくて平然を装い家の中へ一人、入って行く。

ここに指輪がないと知れば、どいう反応見せるのかしら？
クスッと笑い、指輪とそれを大事に思っている女性の顔を思い浮かべ、泣きたいのと笑いたいの自分はどっちなんだろう。