授業に集中して、周りなんて気にすることが今まで無かった。



しかし考え方を変えてから初めて授業を受けている今、蒼空は授業中のクラスを見渡してみた。



ほとんどの生徒が下を向き、黙々とノートを執っている。



その合間に、前を向いて教師の話を聴いている感じだ。



〔へー…。面白いくらい皆同じ動きしてる。〕



恐らく、蒼空も以前は同じだったのだろう。



周りを見ずに、誰にも負けないように必死に勉学に励む姿は、学生の本質としては間違いではなく素晴らしい事なのだが…。



ただ、それが少し異様に見えたのは気のせいだろうか…。



蒼空は目線を右から左へ移し、自分のノートに戻ってきた。



そしてノートを執る続きを始めようとしたとき、なんとなく違和感を感じた。



〔あれ…?今物理だよね…〕



蒼空は頭を動かさずに目線だけを左に動かした。



目線の先には『大学入試過去問題集』が二冊重ねてあり、更に一冊は開いて使用されている。


そして、二冊の過去問の下敷きになっている物理の教科書も見えた。



その主はターゲットの優羽だ。



蒼空は目線をもう一度ノートに戻した。



〔いやいやいや…。堂々としすぎでしょ!!〕



優羽の大胆に授業を無視する行動に、蒼空は衝撃を受けた。



しかし、この事に誰も気付いている様子は無く、教師も黒板ばかりみて気付かない。



〔もしかして、今まで気付かなかっただけ?〕



蒼空は半年以上隣の席に座っているが、一度も優羽や周りを気にしてみたことが無かった。



〔いかに、勉強しか見えていなかったかがよくわかるね…〕



蒼空は自分の視野の狭さに少し残念な気持ちになったが、これからは周りをもっとみていこうと思った。