梅ヶ丘学園高校3年、佐渡蒼空〔さわたりそら〕。
3年F組、通称《万年追試組》に在籍する、いわゆる落ちこぼれである。


優羽にとっては『馬鹿』の中でも最上級の『馬鹿』になる。


もちろん、そんな者たちに興味は無い。


ただ、万年追試組に所属する興味対象外にあたる蒼空のことを知っているのには理由があった。



「…おはよー…会長ぉ。今何時?」


「…おはようございます、佐渡さん。今は1時を過ぎたところですよ。」



目を見開いていた蒼空は、自分がどこで何をしていたのかを思い出したのか、優羽に声をかけてきた。


そして優羽は気を取り直して答えた。


「1時かぁ~…。」


「…何故ここに?」


「ん?何故ここに?う~ん…」


優羽は疑問に思ったので聞いたが、すぐに後悔した。


〔馬鹿に話しかけるなんて!時間の無駄じゃないか…〕


ここにいる理由なんてどうでもいいから、すぐに出て行ってもらわないと…。


ここは優羽にとっては唯一、自分になれる場所なのに…。



「眠たかったから寝てた」

「はぁ?」


〔あっ!しまった!!〕


優羽が考えている時に蒼空が答えたので、つい素で返事してしまった。



優羽の言葉に蒼空の大きな目がさらに大きくなった…が、



すぐに目を細めるようにして、ニヤリとした。


「いいねぇ~、会長の裏の顔。日頃の会長からは想像できない悪態ぶりだね~。」


「…っ!!!!」


「あの先生、確かに声大きいし、態度もでかいよね~。」



顔面蒼白になった優羽に向かって、蒼空はにっこり笑った。


「仮面優等生君、諦めてね♡」


人生最大の不覚である。