「…2年ほど前からね、娘の体調がおかしくなって…。」



蒼空の母は話し出した。



蒼空本人からではないことに、何ともいえない気持ちになりながら、優羽は聞き手に徹底する事にした。




「…心臓の病気でね…。」


〔………心臓………。じゃあ今日のあいつは……。〕


「通院して薬を飲んで様子を診ているんだけど、最近発作がでるようになって…。今日も学校で発作がでたんだと思うの。」




心臓の発作…。




生命に直結する発作に、優羽は愕然とした。


蒼空は2時間もかけて帰れる状態ではなかったのだろう。
車で迎えにきてもらうなり、送ってもらうなりして、なるべく安静にさせるべきだった。


優羽は自分の行動を後悔した。



優羽の思っていることに気付いたのか、蒼空の母は話を続いた。


「でも、今日の蒼空はラッキーね!かっこいい男の子と2人で帰って来ることができたんだもの。…何より嬉しそうだったもの。」


蒼空の母は優羽に微笑んだ。


「でも親としては、もっと包み隠さず体調の事や気持ちの事を教えてほしいんだけどね…。なかなかね…。」


ふぅ…と蒼空の母は溜め息をついた。




「いずれ手術をしないといけない…とは思っていたんだけど、高校を卒業するまで様子をみようって…。でも発作の頻度が増えてきたら時期を早める事も考えようって話になってるの。」



〔…ああ…だから…〕




優羽は察した。




「あの子、卒業したいのね。」





優羽は、娘を想う母と、命を削っている蒼空、お互いの心のすれ違いを感じた。