電車の走る音と、車内アナウンスが聞こえる電車内。

2人に静かな時間が流れていた。



「……ごめん……」



口を開いたのは蒼空だった。


「……なにが?」


優羽が訊いた。


「勉強していたのに邪魔して…。しかも、送ってもらうなんて…」


「そんな状態の人間を1人で帰すのはどうかと思う。人としてありえない。」


「…でも受験勉強が…」



優羽は学園史上一番の注目生徒。

他の受験生も大変だが、周りからの期待と重圧は優羽が一番の重量級受験生だ。

蒼空は生徒会室に入った時に、優羽の多量に置かれていた大学受験の資料を見ていた。


「俺の学力はたかが数時間サボったくらいで、志望校を不合格になるほど落ちぶれてはいない。」


優羽はサラッと言った。


蒼空はそれを聞いて、少し寂しそうな表情になったが…


「うん、そうだね。優羽ちゃんだもんね…。」


と答えて、


「よしっ!今日は甘えちゃお!」


と、いつものように明るい蒼空をみせた。


「優羽ちゃんと帰れるなんてハイパーレアだもんね!」

「ハイパーって…お前な…」



優羽は呆れ顔で蒼空をみた。


蒼空はキラキラ輝くように笑った。