優羽は幼いときから、弁護士の両親の指導の元で英才教育を受けてきた。


「立派な弁護士になるために」


が両親の口癖だ。


幼い優羽は両親に褒められるのが嬉しくて、両親の期待通りの好成績をとっていた。


しかし、やがて優羽が好成績であるのは当たり前になり、少しでも成績が悪くなると厳しく叱られるようになった。


子供の本能か、優羽は次第に両親の顔色を伺いながら生活するようになった。


それは両親だけではなく、周りの大人、子供に対しても同じで、相手のことを観察し、その人が求めている答えを的確に導き出す術を身に付けた。


それは無自覚で優羽を追い詰めるようになる。


『愛想がよく、任されたことは確実にこなす。
成績は優秀で人徳もあり、完璧人間だ。』


周りからの評価が高くなればなるほど、優羽は更に自分の評価を上げるために努力しなくてはいけないのだ。


自分の意志ではなく、すべては両親の期待に応えるために。


『弁護士』になるために。