優羽は集中力が途切れてしまい、勉強の手が止まってしまった。


溜め息をついてペンを置いた。


そして、胸ポケットから生徒手帳を取り出した。


さらに生徒手帳の中に入れてある『生徒会役員証』を出した。


優羽は立ち上がり、斜め後ろにある『生徒会重要書類庫』の前に移動し、センサーに生徒会役員証をかざした。



「ピピッ!…カチャン」



電子音がして書類庫の施錠が解除された。


扉を開けて、優羽は『生徒中間報告書』を手に取った。


『生徒中間報告書』⇨全校生徒の住所、内申状況、各学年の在籍クラスなど、個人情報が記載された書類。


普通は学園側が管理するものだ。


しかし梅ヶ丘学園高校では、学園と生徒は共に平等で、不正や不条理な事が起こらないようにチェックするようになっており、資料は互いに責任を持って管理しあう方式をとっている。

なので生徒会役員は校内選挙で決められるのではなく、学園側から役員になる条件を満たしている生徒を厳選し、推薦されるのだ。

推薦された生徒は基本拒否することは出来ない。
その事自体が既に不条理に思うが、役員決めだけは学園側は個人情報を取り扱うだけあって厳しく審査し、その決定は絶対なのだ。

表向きは生徒会役員だが、主な役目は生徒の個人情報を管理するシークレット役員で、責任は他校に比べてはるかに重い。


生徒会役員全員が重責を背負う中、会長である優羽の責任はさらに重い。


個人情報が収められている書類庫の鍵は、会長ただ1人だけが持つ決まりで、現在は優羽が全校生徒の個人情報を預かっている事になる。


生徒会長は、生半可な者では出来ないのだ。