今日もまた、いつものように優羽は生徒会室で自己学習をしている。



現在授業で教えられている内容は、既に優羽は学習済みだ。


優羽はほとんどの授業を欠席するが、学校には毎日登校しており、気が向いた時だけ授業を受けている状況だ。


いつものように勉学に勤しんでいると、



「ガタンッ!」



と資材室から音がし、その後すぐに扉の開く音が聞こえた。


そして生徒会室の中扉がコンコンとノックされ、静かに開いた扉の隙間から蒼空が顔を出した。


「おはよー会長ぉー!今日も元気におサボりしてるねー!」


「…朝からテンション高くてうっとうしい…」


優羽と交渉してから約2週間、毎日蒼空は資材室から侵入し、生徒会室にいる優羽に声をかけにくる。


優羽は完全に仮面を取り外し、蒼空の前では毒舌口調をさらけ出すようになっていた。


「今日も隣借りるね~」


「佐渡お前、最近授業全然出てないんじゃねーの?もうすぐ試験だぞ?」


優羽は珍しく人の事が気になり、蒼空に聞いた。


「もー!またそれ!」

「え?」

「佐渡って呼ぶのやめてよね~!堅苦しい感有りすぎだよ!」


〔じゃあなんて呼んだらいいんだよ…〕優羽が心の中で思っていたら、


「もっと親しみやすく、蒼空ちゃんとかさぁ」

「…断る!」

「えー?なんでー?私は優羽ちゃんって呼んじゃうよー?」

「優羽ちゃん!?」


蒼空の言葉に優羽は声が裏返りそうになった。


「そっ!だって会長は名前じゃないもんね?」

「……勝手にしろ。」

「はい、優羽ちゃん!」


蒼空の勢いには勝てないと、優羽は交渉時に悟っていたので、今回も一度蒼空の中で決まったことは覆すことは出来ないと判断したのだ。


「では私はお隣で休ませていただきま~す!おやすみ~」



言いたいことだけ言って蒼空は中扉を閉めた。


〔うまいこと流されたな…〕



優羽はそう思いながら閉まった扉を見つめた。