生徒講堂は卒業生とその保護者、教職員、来賓、在校生の代表でほぼ満席状態になった。


卒業式は滞りなく進み、卒業生代表の優羽が答辞の為に前に出た。


以前出席した生徒集会の時とは違い、女子のキャーキャー声はさすがになかったが、優羽が答辞を読み出すとあちらこちらですすり泣く声が聞こえてきた。


入学してからの3年間、生徒それぞれが培ってきた思い出がある。


それを思い起こし、そしてこれからはその時間がもう2度とやってくることはないと自覚する。


蒼空も優羽の答辞を聞きながら、3年間の思い出に耽った。


初めてライバルになる相手に巡り合えた喜び、病気の発症による絶望、初めての恋。


予想もしていなかった事を経験した3年間。


その中で、常に蒼空の思いの中心にいたのは優羽だった。


しかしその優羽と、これからは会えなくなる。



蒼空は卒業後すぐ、手術のために異国の地へ旅立つことが決まっていた。