母親の車から降りて優羽と別れた後、蒼空は約3ヶ月振りに追試組の教室に向かった。
教室の入り口は開いていて、中からは賑やかな声が聞こえてきた。
「あっ!!スカイちゃん!?」
蒼空が入り口に立つと、ケリーが気が付いた。
久しぶりに会うクラスメイトは、ケリーの声で教室の入り口に視線を移した。
「本当だ!おはよー、久しぶり〜‼︎」
「俺らのこと覚えてるかー?」
久々の登校に、正直、不安はあった。
しかし、皆は不安を吹き飛ばしてくれる明るさで、今まで通り明るく声をかけてくれた。
「はいはーい。中に入ってくださいよー。」
今度は、ホッとしていた蒼空の後ろから声がかけられた。
「あっ!ごめんなさい!」
慌てて教室に入り後ろを振り向いたら、にかっと笑う一紗が立っていた。
「よースカイ!おはよっ!」
彼もまた、いつも通り明るく、笑った顔は相変わらず少し幼く見えた。
「一紗君!おはよう。」
一紗に会うのも約3ヶ月振りだ。
「まぁとにかく席に座れよ。」
「あ、そうだね。」
一紗に促されて、久々に自分の席に座った。
一紗も隣の席に座り、蒼空の方を向いて頬杖を付いた。
「やーっと会えたのに、今日で卒業かぁ…。残念だな…。」
一紗は今度は少し苦笑いしながら話しかけてきた。
「…そうだね」
蒼空も苦笑いしながら応えた。
「…駒居君、家に来た?」
「えっ⁉︎」
一紗からの質問に、蒼空は驚いた。
蒼空は優羽が一紗と接触したことを知らないのだ。
「その反応は来たな。」
「えっ…うん。でも…なんで?」
蒼空は想像できない組み合わせに目をまん丸にした。
一紗は頬杖を付いたまま、蒼空をじーっとみた。
そして、にかっと笑って、
「さぁー、なんでだろうね?」
と、ごまかした。
「えー⁉︎なんなの⁉︎」
蒼空は気になって仕方がなかったが、一紗はニコニコ笑うだけでそれ以上は何も話さなかった。
蒼空はもーっと言いながら、頬を膨らませた。
一紗はそれを見て、また笑った。
その時、式場へ移動するように放送がかかった。
「じゃっ、行くか!」
「うん。」
蒼空たちは卒業式が行われる生徒講堂に向かった。