一紗から封筒を受け取った優羽は、屋上で固まっていた。


そして封筒の宛名をもう一度見た。


(なんだろう…きっかけをつくってくれたのか?)


優羽は一紗が蒼空宛の手紙を自分に託した意味を考えた。


(でもなんで…)


優羽と蒼空に接点があることは誰も知らないはずだ。


2人の関係は誰にも話さない約束だったのに…。


(約束を破ってまで話してしまうほどの仲なのか?)


優羽は、蒼空と一紗の関係がただのクラスメイトではないのではと勘ぐった。


「…っくそっ…」


優羽はイラつきを隠せず、感情が口に出た。


今まではこんなことはなかった。

優羽が感情をコントロールできないのは、蒼空が関わった時だけだ。


優羽自身、気付かないフリをしていたが、本当はそうなる意味はわかっていた。



【嫉妬】



自分の感情にそんなものがあるなんて…。


優羽は嫉妬という感情が芽生えたきっかけも、おそらく随分前から気付いていた。


でも、自分の中で認める事ができなかったのだ。



「こんなのは…バカだけの感情だと思っていたのにな…」



優羽はフーッとため息をつき、封筒を持ったまま屋上を出た。