「スカイ!おはよー。」

「一紗君。おはよう。」


新学期になり数週間が過ぎた9月下旬。


一紗はいつもよりなんとなく足取りが軽い感じで蒼空の元にやってきた。


「あのさ…」


一紗は蒼空の耳元に近付き小声で話しかけてきた。


「なに?」


蒼空も耳を一紗の口元に寄せた。


「実はさ、二葉のドナーが見つかったんだ。」

「えっ!?」


蒼空はつい大きな声を出してしまい、慌てて手で口を押さえた。


一紗は耳元から離れ、目で謝る蒼空を見てニカッと笑った。



「一歩前進だよ。」

「だね!よかったね~。」



蒼空も笑った。



「でさ、近々入院してすぐ移植する事になるんだけど、その前にもう一度スカイに会いたいって言ってるんだ。」

「私?」

「そう。また家で話したいんだって。女の子同志の話。」



一紗が今度はわざとらしくニヤリと笑った。


蒼空は夏休みの二葉にメイクをされたことを思い出した。



「まっ、ある程度覚悟してきて?」

「うー…。まぁいいか~。」



蒼空はメイクをされるのはちょっと気が退けるが、二葉と過ごした時間は楽しかったし、また来ると約束もした。


心のどこかで楽しみにしている気持ちが芽生えているのは事実だ。


数日後、蒼空はまた真田邸にお邪魔することが決まった。