「それじゃあ、お邪魔しました。」

「今日はありがとうございました!すごく楽しかった~!」

「こちらこそありがとう。じゃあまたね?」

「うん!」


蒼空は夕方、お邪魔していた真田邸を出た。


「じゃ、送ってくるから留守番してろよ?」

「はいはーい!」


一人で帰れると言ったが、一紗が駅まで送ってくれる事になった。


二葉曰わく、「ナンパされたら困るでしょ?お兄ちゃんが。」だそうだ。
蒼空は何のことかよくわからないまま、一紗に送ってもらうことになったのだ。


「あ、蒼空ちゃん!目は擦ったらだめだからね?」

「…わかったよ。」


メイクは落としてから帰りたかったが二葉に断固反対され、そのまま帰ることになった。

メイク馴れしていない蒼空はつい目を手で擦ってしまい、パンダ目にしてしまう。
訪問中、二回手直しされた。



「電車とかで擦っちゃうと最悪だよね…」


蒼空は駅に向かって歩きながら呟いた。


「目?」

「そう。馴れないことしたらダメだね~」

「…でも、すごい似合ってるぞ?」


一紗はニカッといつもの笑顔で褒めてくれた。


「そうかなー…。まぁ、せっかく二葉ちゃんがしてくれたんだし、家まではこのままキープするよー。」


蒼空は完全に諦め、くすくす笑った。

一紗もくすっと笑った。





「悪かったな。いろいろと。」

「え?」


数分歩いた時、一紗が言った。


「二葉の事。泣いたりわめいたりして…。」

「あぁ…」


確かに、訪問早々取り乱した二葉に正直驚いた。
でも、蒼空にはその気持ちがわからなくもなかった。だから一紗に「気が合う」と言われたのだろう。


「ちょっと感情の起伏が激しい時があって。まさか今日なるとは思わなかったんだ。ごめん。」

「ううん。ま、お年頃の女の子は誰だって情緒不安定だからね。一紗君も気をつけないとね?」

「えっ?俺?」


蒼空の言葉に一紗はたじろいだ。


「そっ。女の子を怒らせないようにね?」


一紗は、あーなるほど…って顔をした。


「…気をつけます。」

「よろしい!」


二人はまた笑い、駅までの道のりを楽しんだ。