優羽を見て、気分が何となく沈んでしまった時…



『トントンッ』



蒼空の背中を一紗が優しく叩いた。



蒼空は一紗を見た。



「面白くないし、抜ける?」



一紗がコソッと話した。



「…うん。」



正直、優羽が立派に会長の務めを果たしている姿を見るのが辛くなっていた。



蒼空は一紗と一緒に集会を抜けた。



「はぁー…」



講堂の外に出て、蒼空は深呼吸をした。



〔私…駒居君が好きなんだ…。〕



蒼空はハッキリと自分の気持ちを自覚した。



自覚したからこそ優羽の姿を見るのが辛かった。



あまりにも自分とは違う。
みんなに期待と尊敬をされ、彼が輝いて見えた。



彼の横には相応しい人がきっと現れる…いや、もういるかもしれない。



〔どちらにしろ、それは私ではないね…〕



生まれて初めて自覚した恋はあまりにも無謀で、すでに失恋気分になった。



「おーい、戻ってこーい。」



蒼空はその声にハッとした。



「おっ、戻ってきた。おかえりー。」



「えっ?」



一紗が蒼空の顔を覗いていた。



「どこらへんまで旅してた?」



「えっ?あっ…と、ちょっとそこまで…」



蒼空は講堂をでた後、恋の自覚で一人の世界に入って考えていた為に、一紗の問いかけに全く気付かずフリーズしていたようだ。



「そうか。これからどうする?暇なら買い物付き合って欲しいんだけど、どう?」



「買い物?どこまで?」



「駅ビルまで。帰り道だろ?」



駅ビルなら確かに帰り道で、今日は午後の授業はなく時間が早い。そんなに帰りも遅くならない。



「うん、いいよ。」



「うっしっ!」



一紗は小さく拳を握った。



「?教室に鞄取りに行こ?」



「おうっ。」



蒼空はこの日初めて、放課後に男の子と寄り道して帰った。