始まりの予感



そんな事を考えていると、エイジは器用に体勢を180度変えた。


私を抱き締めたまま、軽々しくいとも簡単に。


身体が揺れて視界が反転する。


さっきまで視線はエイジの胸元だったのに、今度は真逆の天井を見上げる形になった。


エイジに覆い被さられ、その意地悪な顔が視界いっぱいに広がる。


恥ずかしい事に、両手は顔の横でエイジの手によって取り押さえられていて。


グッと力を入れて抵抗してみてもビクともしない。


「シオ」


色素の薄い茶色の瞳が真っ直ぐ私を捉える。


キリッとしている男らしい眼差しに鼓動は更に加速していく。


いつもはヘラヘラしてるくせに。


やめてよ、そんな真剣な目で私を見るの。

なんだか、すごく調子が狂う。


「なにすんのよ……わけ、わかんない」


声にさっきまでのハリはなく、見つめられているせいか弱々しくなってしまった。


目をそらそうとしてみても、どこまでもエイジの視線が私を追いかけて来てそらせない。


「シオが離せとか言うからだろ?俺んち来ないとか平気で言うし」


はぁ?

普通言うでしょうよ。

彼氏でもなんでもないただの友達なんだから。


私、エイジの彼女じゃないんだからね。