絶望した。
「キーチ…、深雪ちゃんとも付き合ってたんだ…」
私が思わずそう言うと、彼はうつむき、また口をつぐんだ。
泣きたくなった。
私は両手をかたく握りしめ、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「じゃあ…、私はなんだったの…?」
こんなこと言うつもりはないのに、つい口が先走る。
キーチは再び顔を上げて言った。
「信じてもらえないかもしれないけど…、ミッチは俺の、大事な人だったよ…」
目頭が熱くなった。
「国交部で一生懸命留学生のお世話してるミッチ見ててさ…、あんま目立たないけど、人に対して気配りのできる、気持ちのやさしいイイ子だなあってずっと思ってた…。でもミッチ、ずっと彼氏がいたみたいだし、俺の立場や年を考えても、告白とか絶対できなくてさ…。そうこうしてるうちに俺…、深雪に告白されたんだ…。どうしようかと迷ったけど、深雪、なんかお前とカンジが似てるんだよ…。それで俺、あいつと付き合うことにしたんだ…。最低だよな…、俺は深雪と付き合うことで、ミッチを忘れようとしたわけだからさ…」
そう言うと、キーチは再度目線を外した。

