「2次会はカラオケです」という司会者の声を無視して、私は友実にバイバイを言い、ひとり玄関へ下りた。
そして今なら終電に間に合うだろうと薄暗い繁華街をとぼとぼ歩いていたら、
急に後ろから誰かに左腕を引っ張られた。
変質者…!
そう思って振り返ると、
そこにいたのはキーチだった。
片手に送別会でもらっていた大きな花束を抱えている。
「え…、どうしたの…?2次会は…?」
驚いた。
こんなふうに話せるとは思っていなかったので、胸が高鳴った。
「ミッチは行かないの?」
キーチはさらっと聞いてきた。
「あ…、私、これから電車で実家に帰るんだ。終電逃せないから…」
すると彼はすかさず言った。
「なら俺も行かない」
「え…?でも主役がいなきゃ…」
「いーの、いーの。あいつら俺にかこつけて、ただ騒ぎたいだけなんだから」
キーチはそう言って笑うと、私の目をじっと見つめてきた。

