私はしばらく視線を落としていたが、次第にカップを握る手に力が入っていることに気づいた。
「…どうして?」
「ん…?」
「どうして、そんな計画立てたの…?」
コージさんの気持ちもわからないわけではなかったが、そう聞かざるを得なかった。
「どうしてって聞かれても…」
コージさんは一瞬躊躇したように言葉を切った。
そして何か言葉を探すかのように下を向いた後、再び顔を上げて言った。
「やっぱ、一度くらい留学してみたかったからかな…?」
思わず「茶化さないでよ。ホントは日本でキーチと深雪ちゃんを見ているのがつらいから、海外に逃げることにしたんじゃないの?」と言いたくなった。
けれどやっぱり言えなくて、
代わりに「わかった…。ごめんね、わざわざ時間取ってもらって」とだけ言った。
そして財布から千円札を数枚抜き出すとそれをテーブルの上に置き、「お釣りはいらないから」とすぐ店を出た。
コージさんは何も言わなかったし、後を追っても来なかった。

