私の頭は再度混乱をきたした。
「じゃあ、どうして深雪ちゃんはキーチと結婚することになったの…?」
コージさんは雨雲で薄暗くなった空を見上げた。
「それは…」
その後彼がなかなか続きを言おうとしなかったので、私は唾を飲み込み彼の言葉を待った。
そして聞かされたのは、心を突かれるような答えだった。
「俺が深雪に、子どもを堕ろすよう言ったからだよ…」
「え…?」
「それで深雪は俺と一緒になることをあきらめて、兄貴のところに行ったってわけだ…。おそらく、『あなたの子を妊娠したのよ』とかなんとか言ってね…」
「うそでしょ…?」
私の問いに、コージさんは首を横に振った。
信じられなかった。
「どうしてそんな…、子どもを堕ろせだなんて言ったの…?」
コージさんはやさしい人だ。
とてもそんなことを言う人のように思えない。

