キーチと深雪ちゃんが結婚するのは自分でも納得していたことだったが、
幸せそうな家族の姿はやはり目に余るものがあった。
私はアルコールの入ったグラスと軽食の載った小皿を手に取ると、
みんなに気づかれないよう会場からこっそり外へ出た。
ホールからテラスへ続くドアを開ける。
すると、
そこには既に先客がいた。
コージさんだった。
グラスを傍らに置き、コンクリートの上に座り込んでいる。
「コージさん…。どうしてこんなとこにいるの?」
「みちるこそ、なんでこんなとこにいるんだ…?」
「やっぱり幸せそうなふたりを見るのはちょっとつらくて…」
コージさんの隣に腰を下ろすと、意外にも彼は「そっか…、みちるも俺と同じか」と悲しそうに笑った。
“みちるも俺と同じか…”
私はその言葉の意味がわからず、少し戸惑った。
私の何がコージさんと同じだというのだろう。

