私がまごついていると、母は私の目を見て言った。
「でもね、みっちゃん。結婚は一生の問題よ。私はみっちゃんが本当にしたくない結婚なら、やめてもいいんじゃないかって思ってるの。みっちゃんはお父さんや優くんのことを考えて結婚を決めたのだろうけど…、結婚って、そんなふうに誰かのためにするものじゃないでしょ…?」
母は一呼吸おき、ゆっくり続けた。
「お母さん、あなたに後で後悔するような選択をしてほしくないのよ」
母がコージさんと同じようなことを言ったので不思議だった。
母は私の気持ちを全部見抜いているのかもしれない。
私は「大丈夫だよ」と微笑んでみせた。
けれど母は疑わしそうな目をして、再びコーヒーをすするとそれきり口を開かなかった。
私達は無言のうちに食事を終えた。

