父に真実を告げられた日から、私は両親と連絡を取ることを避けていた。
マサとの入籍を決めた日に家に電話を入れたが、以後ふたりとつながることはなかった。
もともと親とはそんなに連絡を取り合うこともなく、何かあれば母にメールする程度だったが、
今やそんなこと絶対にできないと思っていた。
次に母に会ったらなんて言おう…。
どう振る舞おう…。
そう考えては頭を痛めていた。
しかし明日から4月という日の午前中、
私は突然母から電話をもらったのだった。
〈今仕事で近くに来てるの。よかったら一緒にお昼でも食べない?〉
薄っぺらい携帯電話の向こうから聞こえてくる母の声は、いつもと変わらない、普段通りのものだった。
どうしようかと迷ったが、特に予定はなかったし、断るのも何か不自然な気がしたので、
私は思い切って母に会いに行くことにした。

