彼女のすべてを知らないけれど


本当は、心の奥が苦しかった。平気なフリで、普通通りの顔で彼女と話していたけど、彼女が人間らしさを見せるたび、俺は自分がしたことを思い知らされていたんだ。

「彼女に親しみを覚える一瞬一瞬。そのたびに、ケガをしていたロシアンブルーの姿を思い出すんだ……!

彼女の寿命が短い。そんな理由で、俺はあのコをたった一匹でこんな冷たい場所に放置してしまったんだ。クロムのことを引きずっていたから、なんて、言い訳にしかならない。

人間になった後、なぜか、彼女の両足のケガは治ってた……。お守りを使って、人間になりたいっていう願いを叶えた時に、一緒にケガが治るよう祈ったのかもしれない。それくらい、あのケガは彼女にとって苦痛だったんだ……」

「いや。彼女の足のケガは、我が治しておいたぞ。オプションサービスだ」

「え……?」

「命守流願望成就札が叶えられる願い事は、原則ひとつだ。さすがに、あのケガで人間になるのはキツイだろう」

「ミコトが、治してくれたの……?」

全身から、それまでの緊張感が抜けていく。

「ああ。傷の治療は我の本分ではないが、さほど難しいことではない。ま、世界各地に点在する様々な神と比べても、我はレベルの高い神らしいからな」

「ありがとう、ミコト!」

前だったら、調子に乗りすぎなミコトのセリフに対し二、三、突っ込みを入れていたが、今は、心の底から素直に感謝した。