彼女のすべてを知らないけれど


なんか、こういうのっていいなぁ。

スプーンや飲み物の準備をしながら、俺は改めてそう思った。

もちろん、ミコトと料理を食べるのも楽しかったんだけど、こうやって女の子と二人きりで何かをするっていうのは、男同士にはない、何かがある。

高校の時、女友達はいたけど、二人きりで遊んだことはなかったもんな。いつも、男女混合で団体行動だったし……。


食卓につくと、心なしかウィンクルムはキラキラしたまなざしで料理を見つめていた。

ウィンクルムがシチュー鍋を見ている間、俺は横でオムライスと簡単な野菜サラダを作っていた。

「手伝ってくれてありがとう。いただきます」

「猫時代にはなかったものばかりだわ」

ウィンクルムは、俺の仕草を見よう見まねでスプーンを手にし、慎重な手つきでシチューをすくう。力入れすぎなせいで、手がかすかに震えているのが何だか可愛かった。

「どうかな?食べれる?」

「……おいしいわね!初めてよ、こんなに私の舌を満足させる料理は……!」

「よかった」

「明日への期待値が高まったわ。よろしく頼むわよ」

孤高(ここう)な猫キャラだったはずのウィンクルムが、瞳をうるうるさせ感動している。

よかった。ウィンクルムがこんなに喜んでくれるなんて、また、明日からがんばらなきゃな。

久しぶりに、胸がぽかぽかしている。クロムが亡くなってから感じることのなかった優しい気持ち。

他にも、初めて感じる何かが、少しずつ心に芽生えていた――。