彼女のすべてを知らないけれど


クロムを育てていたから、猫にとって苦手な食材があることは知っていた。

だからこそ、ウィンクルムも、猫だった時(彼女いわく猫時代)に食べられなかったものを避けたがるかもしれないと予想していたのだけど、その考えは間違いだったみたいだ。

ウィンクルムは、なんというか、たくましい。うん、たくましいんだ。男の俺以上に、頼もしい。見た目の可愛さからは想像がつかないほどに。

合鍵の件で、優しいコだな~と思ったけど、気が強くてたくましいのもまた、彼女の本質なのだろうか。


「だいたい、人間は好き嫌いする人が多すぎるのよ。少しはその辺の野良猫を見習いなさいよね」

ウィンクルムは不満げにつぶやいた後、鍋から立ち上るクリームシチューの匂いに頬をほころばせた。

「好き嫌いかぁ。たしかに、ない方が良いのかもしれないけど、俺もあるし、そればっかりは仕方ないよ。皆、一人一人性格が違うように、食べ物の好みも変わってくるからさ。

ウチの父さんなんて、好き嫌いのない人だったけど、年取ってから肉が苦手になったって悲しげに言ってたし」

「ふーん。人間って変わってるわね。私達猫は、そこまでこだわらないけど。毒物以外なら」

「そっか、偉いな、猫は」

俺は言い、ウィンクルムの頭をなでる。

「俺も、好き嫌い無くす努力しなきゃな」