彼女のすべてを知らないけれど


その夜、俺は初めて、女の子と一緒に料理を作った。調理実習はノーカン(ノーカウント)で。

今までは、ミコトと自分が食べる分をひとりで作っていたので、これからは、俺がウィンクルムの分も作ってあげようと考えていたんだけど、

「せっかく人間になれたんだから、猫時代には出来なかったことをやりたいわ」

と言い、彼女は自主的かつ積極的に料理をやりたがった。

危なっかしい彼女。猫だったから仕方ないのかもしれないけど、包丁で指を切りそうになったり、沸かしたお湯でヤケドしそうになったりと、ベタなドジを繰り返すウィンクルムだった。……が、出来るだけ丁寧に教えてやると、そのうちスムーズに手を動かせるようになった。

ちなみに、今夜のメニューはクリームシチューだ。じゃがいもが特売で安かったんだよな~。


調理中、念のため、俺は尋ねた。

「ほとんど作り終わった後にこんなこと質問するのも変かもしれないけど、何か、食べれないものとか苦手なものはある?」

「あなた、人間になった私にそれを訊(き)くの?」

つまらなさそうな顔で、ウィンクルムは鍋の中のシチューをかき混ぜた。

「何か、まずいこと訊いたかな?」

「別に。人間にとっては無害な食材でも、猫にとっては毒になるものが、いくつかあるのよ。

でも、今はそんなこと関係ないから、猫時代に食べられなかった物でもどんどん食べるわよ。覚えておいてよね」

「そ、そっか。ならいいんだけど」