彼女のすべてを知らないけれど


店主に代金を支払った後、拭いきれない罪悪感と共に合鍵屋を出て、俺とウィンクルムは帰路についた。

さっき、あんなに熱く謝っていたとは思えないくらい、ウィンクルムの横顔は落ち着いていた。

住宅街の歩道を、肩を並べて歩く。

すっかり日も沈んで、どこかの家から夕食のいい匂いが漂ってきた。お腹が鳴ってしまう。

「今日は、何食べよっかな~。ウィンクルムは、何がいい?」

「…………」

「ウィンクルム?」

道を照らす外灯が、ウィンクルムの横顔を大人びて見せた。

「怒らないのね」

ポツリと、ウィンクルムが言った。

「あなたの寂しい財布から貴重なお金が出ていくようなことを、私はしたというのに」

「まあ、たしかに痛い出費だったし、困りはしたけどさ」

俺の気持ちは、落ち着いていた。

「怒るわけないよ。ウィンクルムは、まだ人間の世界に慣れてないから、失敗するのは仕方ないし」

「違うのよ」

「え?」

「たくさんあった方が、万が一失くしても困らないでしょう? だから私は……」

うつむくウィンクルム。淡々としゃべってるけど、その唇はかすかに震えている。まるで、泣き出す寸前の子供みたいで、かわいいなと思った。