ミコトがいないことに愕然としているうちに、店主は早くも警察に電話をしていた。
「あの! それはちょっと待ってください!」
俺が止めようとした瞬間、シワの深い店主の手から受話器を取り上げたのは、ウィンクルムだった。
「おい! 何をするっ」
「ごめんなさい! あなたを困らせる気はなかったの! 許してちょうだい」
空気がピンと張りつめる。
俺の前では冷静で、抑揚のない話し方をするウィンクルムが、感情的に訴えた。
気圧(けお)されている店主のそばで、俺も目を丸くした。
「鍵の代金を払わなかった私が信用されないのは分かります、でも、この人は他人を騙すような人間じゃありません!」
「ウィンクルム……」
俺のこと、そんな風に思っててくれたのか? まだ、知り合ったばかりなのに……。
思わず、胸にきた。ウィンクルムのことなんてほとんど何も知らないけど、そこまで言ってもらえるなんて……。
普段だったらあまり深く受け止めないけど(そもそも、知り合って日の浅い人間にこんなこと言われたのは初めてなんだけど)、ピンチだったせいか、この時ばかりはすごく感動した。
自分が感じているよりも奥深くまで、彼女の言葉が浸透していく感じ……。


