彼女のすべてを知らないけれど


やはりと言うべきか、店主は俺の提案に心底不快そうな顔をし、

「あのね、そんなことをしたら、他のお客さんに示しがつかないんだよ。来る客皆にそんなことしてたら、ウチの店は潰れてしまうだろう!

悪いけど、それなりにケジメつけてもらわないと困るんだ」

そう言い、店主はレジ横の電話機に手をやる。彼の顔つきを見て、警察を呼ぶつもりなのだと分かった。

そうだよな……。信頼してた客(ウィンクルム)に代金を払ってもらえず、俺にまでこんなこと言われたら、店の人的には困るんだろうな。

分かるけど、そんな大事(おおごと)にされるのも困る!


自分の財布に一万円入れておかなかったことを悔やみつつ、同行者ミコトに助けを求めるべく背後に視線をやる。

こんなことでいちいち神頼みなんてしたくはなかったけど、人間は無力なんだと思い知らされた今、ミコト以外に頼れる者はいない!

「ミコト、やばいよ。どうにかならないかな? あれ? いない!」

店内に入る前までたしかにそばにいたのに、なぜだ?

もしかして、この状況がやばそうだから、めんどくさくなって逃げたとか……?

いや、ミコトはそんなひどい神じゃないぞ!多分。

でも、やっぱりちょっと薄情じゃないか~!?