彼女のすべてを知らないけれど


ウィンクルムは、俺がさっきあげたアパートの合鍵を作りに、ここまで足を運んだんだ。

当然、猫だった彼女には連絡ツールやお金を持つ手段がない。身分証明もない。

鍵の予備は、ウィンクルムの持つ1本を除いても2本あるし、なぜ、わざわざ合鍵を作ろうとしたのかは分からないけど、ここは、俺が何とかしなくてはいけないだろう。

店主に渡された紙に目を通す。請求金額は……。

「きゅっ、9千円~!?」

あわてて店内の料金表を見る。合鍵1本300円。ということは、ウィンクルムが作った合鍵の本数は30本、ということになる。

「払っていただけますね?」

店主が、最後の笑みを見せてくる。この人を、これ以上怒らせてはいけない。下手したら警察沙汰になる。

分かってる。俺は逃げも隠れもしない。ウィンクルムをアパートに住まわせると決めた以上、合鍵の代金を支払うのは俺の責任だ。

しかし、現実は厳しい! 今、俺のサイフには二千円しかないんだ。

「あの、すいません……。今は持ち合わせがないので、そこのATMで下ろしてきていいですか?」

眉間にシワを寄せたであろう店主の顔を見ないようにし、俺は、サイフの中から身分証明を出した。学生証もあれば良かったんだけど、あいにく家だ。