彼女のすべてを知らないけれど


俺と違い、ウィンクルムは冷静な顔つきで、

「どうしてあなたがそんなに悲しげな顔をするの?」

と、不思議そうに尋ねてくる。

俺はたまらず、思ったことを言った。

「だって、愛着持つような名前を付けておいて捨てるなんて、そんな飼い主の気持ち、俺は理解できないから……!」

クロムを飼っていた頃、俺は、1ミリたりともクロムを捨てようなんて思ったことはない。

ウィンクルムの飼い主だった人も、猫が好きだったはずなんだ! なのに、どうして?

「人間はそういうものよ」

ウィンクルムが、淡々と語った。

「今人間になった私がこんなこと言っても説得力に欠けるだろうけど……。

ペットショップなんてものがあることも、私達動物からしたら拷問以外のなにものでもないわ。

人間の癒し、願望、金銭欲、そういったものを満たすためだけに量産される動物達。

あなたは“飼う側の”人間だから、そんなこと考えたこともないでしょうけど」

「……ウィンクルム」

「人間は、自分の都合でペットショップに訪れ、気に入った動物だけを可愛がる。だから逆に、捨てる人間がいても不思議ではない。

私達は、人間と同じ命を持ってこの世に生を受けたけど、人間達から見たら私達は所有物であり、金儲けのための商売道具。小物や消耗品と同列なのよ」

「そんなことは……!」

「そうなのよ。あなたが否定しようとも、動物には値段がついているのだから。人間は、人間に対し値段を付けて生きた人間を売ったりしないでしょう?」


俺は何も言えなかった。

ウィンクルムの言う通りだ……。