「……ウィンクルム」
ポツリと、彼女が答えた。
ウィンクルム。それが、彼女の名前――。猫だった頃に、誰かに付けられた名前なんだろうか?
元々捨て猫だったわけではないだろう、と、仮定した場合の想像だけど。
俺の頭の中を覗いたみたいな顔をし、ウィンクルムは合鍵をにぎりしめた。
「そうよ。ペットショップで売られていた私を買った人間――つまり、私の飼い主だった人間が名付けたのよ。
あの人は外国語に深い興味を示す人でね。『ウィンクルム』は、ラテン語で『絆』を意味する言葉なんですって。
あの人は言った。私との絆は永遠だと。そう誓ってこの名前を付けたのだと。でも、あの人は私の前からいなくなった」
あの人っていうのは、ウィンクルムの飼い主だった人……。
「そんな名前をつけておいて、なんで……!」
頭に血がのぼる。俺には理解できなかった。そんな深い意味を込めた名前を付けておきながら、その猫を……彼女を捨てるなんて。


