彼女のすべてを知らないけれど


彼女の優しい面を、初めて見た。

冷たいコなのかと思ったけど、そうでもないのかもしれない。

次の瞬間、漂う沈黙。気まずくなり、俺はこんな提案をした。

「意外な再会の形だったけど、君と出会えて嬉しいよ。

でも、君にとってこの再会は不本意なものだったのかもしれないとも思う。

あの……。もし、ここにいるのが嫌なら、他のところに行っていいからね? 無理に引き止める気もないから」

幼い顔つきながらも、彼女は女性だ。他の人に『つい先日まで猫だった』と説明しても、誰も信じないだろう。

元から不機嫌な顔を、彼女はさらに渋い顔つきに変え、

「猫だった私が人間に生まれ変わったことを知る人間とそれを信じる人間はあなたしかいない。つまり、他に行くとこなんて無いんだけど。

あなた、私を宿無しにする気? とんだ鬼畜ね」

「キチクって!」

猫のクセに、どこでそんな言葉覚えたんだっ! やりにくい。

色々言いたいことを抑え、俺はこう返した。

「悪かったよ。ごめん。でも、君にとって、ここはあまり居心地良くないかもしれないから、無理に住まわせるのは気が引けてさ……」

「居心地がいいか悪いかは、いつか私が決めるわ。ここに住まわせなさい」

完全に、命令調。でも、彼女がそれでいいなら、ま、いっか。

「分かった。これから、よろしくっ」


こうして、人間に生まれ変わった元猫の少女との同居生活が始まった。