彼女のすべてを知らないけれど


でも、彼女が嫌な気分になるのはしょうがないよな。

いくら自ら望んで人間に変化したとはいえ、今は中学生くらいの女の子。よく知らない男子学生の寝室に居たなんて、抵抗感があっても不思議ではない(さっき彼女が裸でも恥ずかしがらなかったことは、ここではあえて突っ込まずスルーしておくことにしよう)。


彼女の両足を見て、俺は言った。

「ケガ、治ってよかった。心配したんだよ。出血もひどかったし……」

「人間には、つまらないことをする輩(やから)がいるものよ。その分爪で奴らの顔を引っかいてやったから、気は済んだわ」

やっぱり、人間の歪んだ欲求がこの子に向かったんだ……。

もし、俺がもっと早くこの子を保護していたら、そんなひどい目に遭わさずにすんだのかもしれない。

以前飼っていたクロムへの愛情も大事なものだけど、俺は、もっと基本的な何かを忘れていたんだ。

「ごめんね。俺がもっと早く君を助け出していたら……」

一瞬、彼女の瞳が揺らいだ、気がした。

「……あなたは悪くない。アパートがペット禁止であることくらい知っていたわ。病院に連れていってくれて、とても助かったしね。

それに、人間になって傷口も塞がったから平気よ。あなたは気に病みすぎ」

「そう、ならいいんだ」