「そんな……。あるはずない……。でも……」
混乱した。
お守りは、人間の願いを叶えるために作られた物のはず。それなのに、猫の――ロシアンブルーの願いを叶えたというのか!?
「本当に…? 君は両足にケガをしていたロシアンブルーなの?」
「そうよ。なに? お守りを私なんかに使われて、不都合だった?」
彼女は不機嫌になる。何か、気にさわることを言っちゃったかな。どうしよう。悪気はないんだけどな。
これ以上嫌な思いをさせてしまわないよう、俺は一生懸命否定した。
「違うよっ! 不都合なんて思ってない! ただ、こうやって人間になった君と対面してることが信じられなくて、どういう反応をしたらいいのか分からないだけなんだ」
「そう。それならいい」
そっけない言い方だけど、彼女は少し落ち着いてくれた。こっちの気分を、ある程度分かってくれたらしい。
「ところで……」
俺は、彼女に尋ねてみることにした。
「人間の女の子になったのはいいんだけど、君は、どうしてここにいるの?」
「さあね。気が付いたらここに寝てたのよ」
俺のことを嫌っているのか、彼女は嫌そうに顔をしかめた。彼女としても、この家に居たのは不測の事態だったのかもしれない。でも、その反応、ちょっと寂しいな。


